所得税が女性が働くためのインセンティブになるということ
2016.03.11
Taxation
先週金曜日にシンガポール在住の日本人はたらくママ向け所得税セミナーの講師を担当させていただきました。
シンガポールでは給与所得の源泉徴収制度や年末調整がないので、サラリーマンも確定申告をする必要があります。確定申告をするためには所得税の内容を理解する必要があります。普段、日系企業様向けの所得税のセミナーでは所得の種類・範囲について話をすることが多いのですが、今回は参加者がDP、EPまたはSパスで働くママたちで、現地採用者がほとんどでしたので所得控除を中心にお話させていただきました。
参加者からは、はたらくママが取れる所得控除がたくさんあって驚いたという感想をいただきました。
私はこれまで、日本、アメリカ、フランスとシンガポールの所得税に携わってきました。
その中でシンガポールの所得税は子供をもつ女性にとってはたらくインセンティブが一番大きい税制だと思います。
シンガポールの所得税で「はたらくママ」が対象となる所得控除には下記があります。
-Working mother’s child relief(子供1人当たり課税所得の15%から25%相当額を控除)
-Grandparent caregiver relief(所得控除額$3,000)
-Foreign maid levy relief(所得控除額 Foreign Maid levy支払額×200%)
上記は、子供の国籍がシンガポールであることを要件としているなど、外国人は適用対象外となっているものもあります。これらと他の所得控除を組み合わせるとシンガポール人のはたらくママで所得税を納めている人はそれほど多くないと推測できます。
税法は、財源を確保するためのものだけではなく国の戦略を示したものです。国としてどういう国にしたいのか、そのために国民にどういう行動をしてほしいのか。
現在の日本の内閣は、女性の活躍推進を成長戦略の1つとして掲げています。
一方で所得税の配偶者控除が103万円の壁といわれ、既婚女性が働かないためのインセンティブとなっています。
配偶者控除が導入されたのは1961年で今から半世紀以上前です。当時と今では、経済環境、家族のあり方等が異なり、オールドファッションな税制です。
まだ法案は出ていませんが、この配偶者控除を廃止し、配偶者控除の限度額を撤廃した夫婦控除を導入しようという動きがあるようです。
シンガポールでも配偶者控除制度はあります。配偶者の所得が4,000シンガポールドル以下の場合、2,000シンガポールドル(配偶者が障害者の場合は5,500シンガポールドル)を所得控除できます。
配偶者控除がある一方で、上記のとおり働いたときの税務インセンティブを与えています。
日本においても単なる制度の差し替えでなく、女性の活躍推進のインセンティブとなる税制を導入してほしいと思います。