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アジアのリスクと日本のリスク

2016.01.22

Risk Management/ リスクマネジメント

Strategic Riskによる2015年度アジアパシフィック リスクマネジャーによるトップリスクが公開されました。

(出所:http://www.strategic-risk-global.com/asia/)

145以上のアジアのリスク専門家を対象とした調査におけるトップ10リスクは以下のとおりです。

1位 経済情勢・経済動向(Economic conditions)

2位 優秀な従業員の確保と維持(Attracting and retaining a talented workforce)

3位 競争激化(Increased competition)

4位 レピュテーション・ブランドの毀損(Damage to company reputation/brand)

5位 内部および外部からのサイバーアタック(Targeted cyber attack(internal and external))

6位 規制の強化・変更(Tightening and changing regulation)

7位 為替リスク(Currency/FX risk)

8位 契約リスク(Contractual risk)

9位 ITシステムの重要な障害(Failure of critical IT systems)

10位 イノベーションの失敗 (Failure to innovation)

昨年トップ10に入っていた政治リスク(Political risk)、原材料・商品価格変動(Price of materials/commodities)、顧客(重要)データの紛失(Loss of customer/critical data)およびパンデミック(Pandemic)はトップ10外となったとのこと。

興味深いのが、10位にイノベーションの失敗が入っていることです。

昨年はシェアリングエコノミー、AirbnbやUberのサービスが浸透し、今年はさらなる活躍が期待されます。競合となるホテルやタクシー会社にとっては大きな脅威です。ビジネスモデルの変革についていけないことは、市場からの撤退を意味しています。

調査の対象者がグローバル企業のアジア統括だからかも知れませんが、リスクの調査でイノベーションが上位に上がったことに驚きました。

次回の調査結果は、昨年のバンコクでの爆発テロや先日のジャカルタでの自爆テロなどを受けて、地政リスクが順位を上げると思います。

 

アジアのグローバル企業と比べて日系企業は何を重要リスクと捉えているのか気になりました。

トーマツの「企業のリスクマネジメント調査(2014年)」によるリスクのトップ10は以下でした。

(出所:http://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/about-deloitte/news-releases/jp-nr-nr20150107-2-report.pdf)

1位 情報漏えい

2位 子会社ガバナンスに係るリスク

3位 海外拠点の運営に係るリスク

4位 地震・風水害等、災害対策の不備

5位 製品、サービスの品質チェック体制の不備

6位 人材流出、人材獲得の困難による人材不足

6位 大規模システムダウン・情報逸失

8位 規制緩和、強化(法改正、業界基準等)へ の対応の遅れ

9位 業務運用ミスによる多額損失の発生

9位 海外取引に係るリスク

9位 役員・従業員の不正

9位 海外事業買収後の事業統合リスク

2015年の調査結果が公表されていないので1年前のものとなりました。調査回答者は239社で上場企業を含め大企業が中心です。

ITと人材についてはどちらもランクインしていますが、日本の調査ではイノベーションは含まれていませんでした。アンケート項目にイノベーションが含まれていないからですが、もし、含まれていたらどう評価されていたか気になります。

海外進出およびM&Aの増加から「海外」に関するリスクが3つも入っています。海外事業を軌道に乗せるには苦労が多いことを示しています。